ハイカラシンカにみるシオカラーズのクリエイティブ 和とテクノの結節点
Splatoonの賑わいを象徴する「フェス」のテーマ曲
シオカラーズはSplatoonに登場するアイドルデュオであり、世界共通で4時間ごとに決定される対戦ステージの告知を行ったり、
隔週末に行われる「フェス」のスピーカーの役割をこなす、ゲーム内外で人気を誇るキャラクターです。
この記事で考察する「ハイカラシンカ」は2015年5月7日に放映された「Splatoon Direct」で登場し、ファンの注目を集めました。
スプラトゥーン 「ハイカラシンカ」(フェス広場 BGM) 公式歌詞字幕【シオカラーズ】
3Dキャラクターモデルによるダンスは賛否両論あるかと思いますが、見慣れるとカワイイですね。
ほかの代表曲に、「シオカラ節」があります。
Splatoon(スプラトゥーン) フェス映像 シオカラ節Ver.
昨日、12月16日に発表されたSplatoon初の音楽ライブイベント「シオカライブ」は、名前の通りシオカラーズをフィーチャーしたイベントということです。
ゲームの核といえる通常時の対戦楽曲はシオカラーズの楽曲ではないですが、
フェスというユーザー参加型イベント中は彼女らの楽曲で広場もバトルもジャックされ、
オンラインゲームとしてのSplatoonの盛り上がりを象徴する存在としてはふさわしいでしょう。
ビジュアルと音楽 両面からのシオカラーズの設計
「Splatoon Direct」の映像や「フェス開催」の告知映像を見て分かる通り、シオカラーズのビジュアルイメージは決して型にはまったものではなく、
「いま最も勢いのあるアイドル」らしく、きらびやかで斬新、現代的なイメージになっています。
にも関わらず、「シオカラ節」「ハイカラシンカ」「キミ色に染めて」など、シオカラーズの楽曲において共通する特徴として、
いずれもヨナ抜き音階(陽音階)の上に展開され、和のテイストを醸していることが知られています。
ヨナ抜き音階とは要するに「ピアノの黒鍵だけを弾いたときの音階」のことであり、実際にシオカラ節のメロディは原曲のキーで、(ほぼ)黒鍵だけで弾くことができます。
Splatoonの楽曲は任天堂の峰岸透氏、藤井志保氏がそれぞれ作曲を担当していますが、
バトルBGMやヒーローモードのほとんどの楽曲は峰岸氏が担当している一方、シオカラーズが歌う楽曲はすべて藤井氏が担当しています。
最初に「Splattack!」が世界観を象徴する楽曲としてあったということですから、この微妙なトリックを効かせたロックバンド風の楽曲と対置させて、
シオカラーズの存在を際立たせながらも、かつ都会的・現代的な舞台設定と矛盾しないように、
テクノアレンジを効かせつつ、和風のスケールに乗せた楽曲をつくることで、作品の層を厚くしたということなのでしょう。
その際、さまざまな設定がうまくコラボレーションしています。
- シオカラーズは民謡出身のアイドルである
- スパンコールの入った奇抜な衣装に身を包むものの、後ろ手に結ばれた髪型は着物の帯を連想させる
- フェスと言う「現代の祭」のスピーカーであり、カミ様のお告げを聞くという儀式に身をやつす
- イカたちは陸地に適応する進化によって泳ぐことが出来なくなり、しかし、ふるさとへのノスタルジーを心の底に持っている
実際、シオカラーズのポジションはもともと「巫女」が想定されていたということですから、和のテイストというのはかなり初期からあった構想なのかもしれません。
そこにピッタリはまる楽曲として、聴き手が容易に共感し得るエッセンスを応用した「シオカラ節」や「ハイカラシンカ」ができたということなのでしょう。
「ヨナ抜き」と「ニロ抜き」両方生かしたメロディ
ハイカラシンカは「ヨナ抜き音階」と「ニロ抜き音階」を両取りしたような楽曲になっています。
ニロ抜き音階は特に沖縄民謡によく見られ、ポップスでは「島唄」などが有名でしょう。
どのあたりでニロ抜き音階が出てくるか、実際にわたしが作った楽譜を見ながら説明してみましょう。
(上記の楽譜は楽曲の特徴を説明するために引用するものであり、一切の転載・利用を禁じます。 また、権利者の申し立てがあり次第、画像の削除を行います。)
楽譜はシオカラーズが歌いだすAメロを示しています。
最初のポイントは左の赤丸で囲ったシンセのスケールで、他のパートはイ短調であるのに対し、このシンセは実質イ長調に乗っています。
続いてメロディを見ると、最初の2小節ではヨナ抜き音階の上で展開されていますが、
右の赤丸で囲った次の2小節ではイ長調に転調し、しかもニロ抜き音階にすり変わっているのがお分かりでしょうか。
ふたつの特徴的な音階を行き来しながら、全体を破綻なくまとめているという点で、面白い楽曲だと思います。
ちなみに、裏楽曲といえる「マリタイム・メモリー」では、しっとりしたバラード調のアレンジに合わせるためか、
スケールはイ短調のヨナ抜き音階で一貫しており、メロディもそれに合わせて微妙に変化しています(C#を使わないなど)。
シオカラーズのジャンルは「テクノ民謡」?
わたしは音楽ジャンルには全然詳しくないのですが、
シオカラーズの独特の音楽性に名前を付けるなら「テクノ民謡」になるのかな…?
と思い検索してみると、ちゃんと以前から存在するジャンルでした。
「メテオール」というユニットが、日本の民謡にテクノのエッセンスを取り入れた楽曲を作っているようで、
日本人のソウルを刺激する古来のサウンドのそばで「鳴りやまぬ電子音」が特徴的なバンドのようです。
エレキギターが前面に出ている点など、シオカラーズの楽曲とはやや異なりますが、試みとしては近いものがあるかもしれませんね。
関連記事
4/29(金・祝)に超会議・超音楽祭出演が決定したシオカラーズのライブで、観客側から出来ることについて考察した記事があります。
この記事に来て下さった音楽好き&Splatoonファンの方に、ぜひご意見を伺いたい内容になっていますので、
お読みになった上、是非についてブログへのコメントや筆者(@TKTshooter)宛のDMを頂ければ有難く存じます。
参考記事
「島唄」はニロ抜き音階(琉球音階)の楽曲ですが、Bメロだけ日本的なヨナ抜き音階を使っているところがあります。
島唄も「ヨナ抜き」と「ニロ抜き」のハイブリッドだったんですね。
下記の記事によると、そこには深い理由があるのだとか。スケールに深い意味を込められるというよい例ですね。