最強にガーリィな同人CD「girly collection」の全曲レビューしてみる
今回はいつもとちょっと趣向を変えて、わたしが好きなコンポーザーさんの同人音楽を紹介したいと思います。
「TSUGUMI KATAOKA Presents girly collection」は、全国津々浦々のオンナノコしいボーカルさん11名10組を集めて作ったアルバム。
プロデュースを手掛けられたカタオカツグミさんは、1998年から続く音楽ゲームの大シリーズ「pop'n music」の大御所で、
「パーキッツ」や「ブタパンチ」などの名義で楽曲提供されており、同作を遊んだことのある方には馴染み深いことと思います。
また、TVアニメ楽曲制作の実績も数多くあり、1994年放映開始の「とんでぶーりん」OPでメジャーデビュー。
「ミルモでポン!」OP、「ボンバーマンジェッターズ」OPほか、数々のアニメ楽曲を手掛けられています。
さて、ここまでで引っ掛かるところの無かった方も、ご心配なく。
このブログのいつもの流れの通り「まったくご存じでなかった方にアルバムを知っていただく」目標で、全曲レビューを行っていきます。(達成できるかはともかくね…)
一つでも気になるものがあった際には、こちらのクロスフェード試聴からチェックしていってください。
あるいは、聴きながら読んでいくと丁度いい文章量らしいよ!
1.sweet×sweet
sweetxsweet_shortedit Tsugumi Kataoka feat. inaba by tsugumikataoka | Free Listening on SoundCloud
歌詞とメロディがとにかく秀逸かつ直球にガーリィで、アルバムのコンセプトをど真ん中から貫いている曲です。
それだけに、ちょっと甘さがきつめというか、ベタベタなぐらいにも感じられるかもしれないので、最初は好き嫌いあるかもしれません。
でも、一度聴いてストーリーがわかって、アルバムのワールドを一度通して理解してから戻ってくると、「I love you…」のリフレインがすっと身体に入ってくる。
後続の曲がかなりバリエーション豊か(すぎるくらい)なので、「この曲あってこそ、全体としてガリコレ」というハブのような曲になってます。
我儘とか好き嫌いとか趣味とか恋愛観とか、ギュギュッと詰め込んだ内容。
女の子が男の子に対して語りかけるような内容になっているので、男の子目線の曲と言っていいと思いますが、女の子は未知のイキモノって感じがすごく出ててドキドキします。
2.ニジイロスピーダー
もーっカッコいい!! sweet×sweetがミドルテンポの曲なので、ハイスピードなこの曲の気持ちよさ倍増です。
同じ「ガール」でも、ストーリー性とか意思の強さ、アクティブさという点で異質。
「なりたかった自分の姿をイメージして…」など、主人公ばりにカッコいい少女像を真っ芯で捉えてきます。ときめかないわけがない。
最初から強い人間ではなかったらしいところがまた良いですね。
ジャンルとしてはガールズロックになるのかしら?
ギターがカッコいいのは勿論のこと、カタオカさんがこういう曲にピアノを上手に絡めてくるのは、ファンにはご存知の通りです。
任天堂クラスタの一人としては、「道を開けて!」にFEifのカムイを連想しちゃうのが困ったところですが。
3.ヴァニラの森
「森」の音楽っていうと、セラピーとかフィトンチッドとかそういう癒し的な方向性もありますけど、
何か得体の知れないものが棲んでる妖しさというベクトルもあります。この曲は後者。
ネジを巻くような音から始まるこの曲は、夢の中にあるお菓子の森が舞台。
人間の欲(もっと言えば、食欲)に根差しているからこそ、甘美とも悲惨とも取れる物語は終わることがなくて、ずっとずっと続いていく。
聴く人も例外ではあり得ないので、スウィートなサウンドに反したえも言えぬ「コワさ」が付きまとう曲です。
4.BRIDGE
前衛的な力強いビートに儚い歌詞。ハードプログレと言うのだそうです。三連符を基本としたリズムが心地良い。
リキッドメロディ収録の「DNA」とちょっと似てるかしら。サビの入りで英語/仏語を使ってるのも共通点ですね。
この曲は、「僕」が持っている弱気と勇気のバランスが素晴らしい。どちらかに振り切れないいじらしさがカタオカさんの真骨頂と、個人的に思います。
タイトルの通りテーマは「橋」ですが、つなぐのは「you and me」であって、心のつながりを表す比喩になっています。
カタオカさんの曲が好きな方にはゲーマーが多いと思いますが、橋って新天地に向かう入り口だったりして、一歩踏み出すのに躊躇いとかワクワクが湧くような要素ですよね。そういう(変な)観点からも共感度が上がるかもしれません。
キラキラで元気で賑やかなサウンドにノるだけでもいいですが、歌詞を読み込むといっそう深みが出てくる、そんな曲です。
「既読一つつくつかない、そんな些細な他愛無いことで…」という歌詞からも、「僕」が現代的な価値観の中で生きている存在のよう。
ある意味、みんなが普遍的にもつ悩みとか痛みを一番よく描き出した曲かも。恋愛ものって半ば空想の世界ですもんね。
5.ハルシナ -Hallucina-
hallucinaはわたしも知らない言葉でしたが、「幻」のようですね。
パーキッツの曲は、ふじのマナミさんが歌詞を書かれてましたが、辛いことを「仄めかす」書き方が多かったと思います。だいたいメタファーでしたよね。
ハルシナでは直接的な形で、ガッツリと感傷的な想いに触れることができて、その点が大きく違うと感じます。
ピアノ&ボーカルのパートがとにかく泣かせどころ。
透明感のあるヴォーカルと、残された「私」の強い想い(未練とも言える)、そして二人のバックグラウンドを意識させる情景描写。
個人的には、読み切りの漫画とか短編小説みたいな、具体的なキャラクターとか舞台を前提とした物語性が珍しく強い曲だなと思いました。
それ故に、読後感みたいなものを強く感じます。最後の一節が…胸に来る。
6.六道インヴィテーション
香が匂うような立ち込める和の濃~い世界観にも関わらず、なぜかギラつくシンセの音。
女人(と呼びたくなるのです)の覚悟の重さと、あの世が仄見える緊張感がたまらなくカッコいい曲です。
細かいネタも散りばめられており、最近わたしを含む若年世代には某漫画の影響があるので、「金魚草」とか「八寒獄」とかでピンとくる方が多いと思います。そういう曲です。
タイトルのインヴィテーションは「招待」ですね。「手招き」とか「導き」の方がいいかも。
歌詞に出てくるキャッチーな「六道の辻」がわからなかったので調べてみました。
六道の辻とは?――東大路松原をやや西へ行ったあたり。その昔、ここより東にある鳥辺野(現在の『清水寺』などがある丘陵地帯)は、風葬が行われた場所だったそうです。 なので、その入口にあたる六道の辻は、古来より“あの世とこの世の分かれ目”“冥界の入口”と、いわれてきました。
(参考:あの世とこの世の分かれ目「六道の辻」 夜は地獄で閻魔大王のお手伝い?)
…とのこと。「冥界の入り口」なんですね。
7.冬にアイス
「冬にアイスを食べる」、こんなドメスティックなモチーフでも音楽として成立しちゃうのがすごい。
イントロの夢見るような浮遊感、そのあとに来る打ち込みドラムの規則的なリズム。
そしてヴォーカルのウィスパーボイスが言葉遊びと相まって、聴く人を冷たくてクリィミーな世界に誘います。
シンセの音が絶えず「くるくる妖精みたいに」回っているのが心地よく、出てくる音はすべて冬とか雪のイメージの代弁者として申し分ないもの。
もしかしたら、「夏にアイス」じゃこんな純度の高いイメージには結びつかないのかもしれない。
贅沢で欲張りな至福、とはいえちっぽけで少女然としたサイズ感を外してない、sweet×sweetと並んで「ガーリィ」代表選手だと思います。
8.恋人は地底人
底抜けにハッピーでキャッチーな、80年代アニメ風の曲。スウィングするリズムに、キラキラなシンセやブラスがステキです。
歌詞はちょっと変化球ですが、設定はタイトルに尽きるほどある意味シンプルだし、一度聴けば「わたし」と「彼」の地熱…いや、温かい関係がよく伝わってきます。
そして何よりも、ボーカルさんのハマり方!
オールドアニソンが専門の方だそうで、突飛な設定も飲み込ませるカタオカさんのアレンジ力に加えて、鬼に金棒といったところ。
ついつい口ずさみたくなるサビがいいですね。
♪わったしのかーれーは、ちっていじーん!
9.わたしのゆめ
童謡なみにシンプルなメロディとやさしい曲調に、とても純粋な歌詞を乗せた曲です。
正直なところ、この曲の存在がこのアルバムを重たいものにしているのは事実。人に喜々として聴かせる歌ではないですからね。
でも、この歌を心の中にしまっておきたくなる人はとても多いと思う。
「希望にあふれてたあの頃を…」という歌詞から、「わたし」はもうある程度大人なのでしょうね。
最近かなり辛い出来事もあったので、思いっきり感情移入して聴いてしまいました。
聴くたびに痛々しいけれど、この曲の湛えている感傷は無二のものだと思います。
本当につらくて、美しい歌です。
10.みずいろのダイアリー
この上なく真剣で張り詰めた前曲から、ほっとする懐かしさを感じるこの曲への流れ、癖になります。
だけど、これもただの穏やかな曲じゃないんです。
アルバムの色とりどりぶりが凄いので、最初はどちらかというと目立たない方なのですが…気が付いたら、めっちゃ好きになってるタイプの曲。
作詞をされたのは、少女漫画家のやぶうち優先生。
わたしはカタオカさんとのコラボ作「少年少女Complete」の時に知った歴浅なのですが、この曲でこそ「なんて良い歌詞を書かれるんだ…!」と強く印象に残りました。
情景描写やストーリー性がカタオカさんのものとは違ったベクトルで、聴きこむたびに胸に迫ってくるのは流石としか言いようがありません。
美しいストリングスにメロディ、そして素朴だけど芯のあるボーカルさんの声が一体となって、ひとりの少女の一つの時代と心を映し出します。
サビの静かで主張しすぎない、しかし豊かな情感をたたえたメロディが、ディテールの効いた歌詞と絡み合う。そしてボーカルさんがまた、それを上手に引き出すんです。
何度でも聴きたくなる完成度の高い一曲になっています。
11.VICTORY!
努力・友情・勝利…じゃないけど、大団円!
ここまでの感想でお分かりと思いますが、本当に多彩なボーカルさんが参加されているアルバムですので、
ひとつなぎのメロディに歌を乗せるといっても、同じようには聴こえないんですね。
前曲で好きになったカッコよさをもう一度、別の方向から見せてくれたり、中にはちょっとドジっ子っぽく聴こえるボーカルさんも。
なおこの曲は、『非公式2020年東京オリンピックトリビュートソング』というテーマで制作されています。
世界各国から集まってきた最強のエネルギーが一か所に!というところが、このアルバムのコンセプトと重なりますね。
カタオカさんの前作にあたる「ラセンカイダン」には、対になる『非公式2020年東京オリンピックウェルカムソング』こと、「HELLO TOKYO」が1曲目に収録されていますので、
よければこちらもチェックしてみてくださいね。
最強にガーリィなアルバムが、ポチれば手元にすぐ届く!
さて、このアルバムを手に入れる方法はカンタンです。下記の3つのリンクのどれかからポチるだけ。
TSUGUMI KATAOKA PRESENTS Girly Collection(パンチ亭/TSUGTECH RECORDS)の通販・購入はメロンブックス | メロンブックス
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TSUGUMI KATAOKA PRESENTS Girly Collection | OTHER LABEL,TSUGTECH RECORDS | TANO*C STORE
カタオカさんは2011年から同人音楽の活動をされていますが、この「ガリコレ」の続編やライブが行えるかどうかは、このアルバムの売れ行きにかかってくるのだとか。
わたしの声の届く範囲に、音ゲークラスタもアニメクラスタも少ないので、ネームバリューからのオススメはちょっと難しそうなのが辛いところですが…
でも、身近なゲームファン等々の方々になら、すべからくオススメ出来るアルバムだと思っています!
というか、誰か語らいましょう!純粋にこのアルバムが大好きな仲間が欲しいです…!
ではでは、イカよろしく!(最後はイカクラスタに戻る)