おてごろパズルアクション「ハコボーイ!」に隠された情緒的世界観

表現のシンプルさを極めたパズルアクション

2016年1月6日、「ハコボーイ!もうひとハコ」がニンテンドー3DSのダウンロードソフトとして発売されました。

ダウンロードカードがコンビニや家電量販店等で販売されているため、目にされたことのある方も多いはずです。

本作は2015年1月15日に発売したパズルアクション「ハコボーイ!」の、1年ぶりの続編にあたります。

ハコボーイ!は星のカービィの開発元として知られるHAL研究所の新作パズルゲームで、

モノクロで表現された世界と、「ハコの主人公」が「ハコを出して謎を解く」という奇妙な自己完結性が印象的なゲームです。

ハコは出せる数が決まっていますが、踏み台にしたり、障害物をよけたり、高いところに引っかけたりなどができ、

ごく限られたハコのふるまいと、多彩なステージ・オブジェクトによって、様々なパズルを表現しています。

一見シンプルな世界に秘められたストーリー

ハコボーイ!のビジュアルで象徴的なのは、暗示的なモノクロの星空です。

彼らはある星の住人であり、天体規模の災厄によって失った生き場所を取り戻す使命を持っているという、

シンプルなグラフィックとは裏腹のSF的な趣のあるストーリーが、ゲームを進めるにつれ明かされていきます。

「ハコ」をキャラクター化するという大胆な試み

ある意味、このゲームの魅力は、紹介映像冒頭にある、

「ハコです。」からの、「歩きます。」という文句に尽きているとも言えます。

www.youtube.com

生命を持たない「ハコ」に命を宿らせて、活き活きと動かすことは、

想像力豊かな子どもの遊びか、またはビデオゲームくらいでしか出来ないのではないでしょうか。

誰も、ハコが(他の何かの比喩としてでなく)それ自体生き物になって、歩いてゆくなど思わないものですから、

通常では有り得ない文章の繋がりに、ゲームにしか出来ない表現があることを痛感してしまいます。

ごく閉じられた世界観、それを裏付けるBGM

「ハコが主人公」という設定からはじまるこのゲームには、無駄な味付けがありません。

ハコであるキュービィが出せるオブジェクトもやはり「ハコ」ですし、登場する3人の登場人物もすべて「ハコ」です。

あとはせいぜい、ゲームのミニマルな文法に則った「レーザー」や「トゲボー」などの障害物と、報酬としての「王冠」と「メダル」、

自分の背丈くらいなら跳べ、自分の身体の幅くらいなら跳び超えるジャンプ力をもたらす一対の脚があるのみです。

奥行きを必要としない世界のため、3DSの特長である立体視すら捨象しています。

BGMもそれに合わせて、飾り気のない乾いた電子音が主体となって構成されていますが、

単なるシュールな世界であるのみならず、ハコなりの情念やドラマ、文明やふるさとがあることを表現するため、

有機的で重厚なピアノの音色をここぞという場面のみに用いています。

この深みのある世界観を味わうには、ぜひ第一作の「ハコボーイ!」をダウンロードし、

幕間のムービーでタイトルロゴが表れるところまで、プレイしてみてください。

「華」としてのテキストによる情報伝達

以前の記事で、ゲームにおけるテキストの役割が変化してきているという事を述べました。

ところが、ハコボーイ!においては、テキストの役割がプレイの補佐ではなく、

メニュー等のごく限られた場面にのみ登場して、従来の「華」としての機能に立ち返っています。

お楽しみ要素である「コスチューム」や、プレイのヒントになる「ハコ技の書」を選択する画面でテキストが活用されていますが、

わたしにとって、とりわけ印象的なのが「サウンド」のさりげない解説文でした。

HAL研究所のコンポーザーが「星のカービィ トリプルデラックス」のスタッフルームで明かした内容によると、

「曲名はコンポーザーが付けるより、よりゲーム内容に通じたディレクターが付けた方がふさわしい名前が付く」のだそうです。

miiverse.nintendo.net

上記リンクから、ゲーム製作者のネーミングにかける想いについて読むことが出来ます。

「ハコボーイ!」のBGMは、曲名こそ素っ気ないですが、どれも静かで暗示的な世界観を伝える解説文が付いていますから、

ゲーム開発者側のキーマンが文章を付けたに違いありません。

ちなみに、本作のBGMは、(どちらかが)上記リンクの文章を書いたコンビである安藤浩和・石川淳 両氏が担当しています。

サウンドルームで曲目を眺める際には、ぜひこの解説文からも何かを感じ取ってみてください。

色を取り戻した世界での、新たな冒険

「ハコボーイ!もうひとハコ」の世界は、以前のモノクロの世界から一歩だけ前進しています。

キュービィの活躍により「緑」を取りもどした惑星で、安らかに眠る二人のハコの姿を映し出すオープニング。

そして、キーアイテムとなる「プラネトロン」が登場。

キュービィに「もうひとハコ」出せる力をもたらし、新しい冒険へといざないます。

ユーザーからの注目度も高く、発売から2週間以上経った今も、

「キューブクリエイター」「にゃんこ大戦争」「モンハンクロス」といったタイトルを退け、

ニンテンドー3DSのダウンロードランキングで1位の座を守っています。

680円というお手頃な価格に見合った、ライトで手軽なパズルが楽しめるタイトルですから、気になった方はとりあえず買ってみるのもよいでしょう。

わたしのように、思いもがけず世界観にハマるかもしれませんからね。