Splatoonのバトル曲「Ink or Sink」が、メジャースケールらしからぬ響きを持つワケ

Squid Squadの、ひりつく勝負曲


スプラトゥーンSplatoon BGM「ink or sink」15分耐久版 - YouTube

Ink or Sinkは、全部で9つあるSplatoonのバトルBGMの一つであり、

作中のバンド「Squid Squad」の代表曲とされるSplattack!に次ぐ、いわゆる「ヒット曲の次の曲」として作られた(という設定の)曲です。

Inkは塗る、Sinkは沈むという意味の動詞ですが、

「(こちらが相手を)塗るか、(相手のインクに)沈むか」というナワバリバトルを象徴した曲名になっていることが分かります。

実際には任天堂の峰岸透氏が作編曲した曲ではありますが、

設定からも、Splattack!をかなり意識して作ったものと考えられますので、ちょっと対比させてみることにしましょう。

項目 Splattack! Ink or Sink
スケール マイナー メジャー
BPM 174 205

Splattack!はサビ後のシンセソロの部分以外はマイナースケールですが、Ink or Sinkは全編通してメジャースケールです。

また、BPMが大幅に上がっているため、より疾走感が高まり、バトルの苛烈さが感じられるようになっています。

「大合奏バンドブラザーズP」では、デビュー版のダウンロードによる期間限定特典として、

Squid Squadの曲からSplattack!とInk or Sinkの2曲が収録されましたが、Ink or Sinkは半分のテンポに設定されていて、ちょっぴり残念でした。(演奏の都合上かもしれませんが…。)

また、Ink or SinkのBメロではベースが8分ルート弾きをしていますが、

その音階がSplattack!(Jam session)の冒頭のベースの音階から全音上がったものになっており、

憶測ですが、このようにInk or Sinkのキーを決めたのも「より進化した曲」として位置づける狙いがあったのではないでしょうか。

メジャースケールらしからぬ奇妙な響き

Ink or Sinkは一度聞くと忘れない、重苦しさにも感じられる奇妙な響きが特徴的です。

わたしが大学で作曲の授業を受けた時に、

先生が「メジャースケールの曲はマイナースケールの曲に比べると表現のバリエーションには乏しい」という事を仰っていたのを覚えています。

前提知識を必要としない半期の授業でしたので、かなり「大ざっぱ」な解説だったかもしれませんが、

Ink or Sinkは全編通してメジャースケールの曲にも関わらず、それに似合わない奇妙な響きをもたらしているように思えます。

少し調べてみると、これはエレキギターや歪んだシンセの音の迫力がそうさせているだけではなくて、

和声学的なトリックにも基づいていることが分かりました。スコアをもとに解説してみます。

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(上記の楽譜は楽曲の特徴を説明するために引用するものであり、一切の転載・利用を禁じます。 また、権利者の申し立てがあり次第、画像の削除を行います。)

スケールはベースから判断して、シャープが5つのロ長調として書いてますが、

シンセのスコア(上)を見るとファにナチュラルが付いているところがあります。

それもそのはずで、実はシンセはソ♭を根音とする、シャープ6つの変ト長調の上に乗っているのです。

それぞれの楽器が乗っているスケールを整理しましょう。

楽器 スケール 根音
シンセ 変ト長調 ソ♭(G♭)
ギター1 変ト長調 ソ♭(G♭)
ギター2 ロ長調 シ(B)
ベース ロ長調 シ(B)

シンセとベースがそれぞれ違うスケールの上にいながら、音は当たらないようにスレスレのところで演奏を展開しています。

スケールは絶対的なものではなく、移調によってコードを変えるのは常套手段ではありますが、

まったく同時に、パートを異なるスケールに乗せて演奏する(と解釈するのが自然な)曲があることは初めて知りました。

このような曲の作りが他にも見られるものなのか、名前が付いているのかはわかりませんが、

ご存じの方がございましたら是非ともコメント欄から教えて頂けますと幸いです。

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