新連載や一話読み切り型を読み飛ばす「食わず嫌い」の理由
毎週読む作品、時々飛ばしてしまう作品 違いは何?
漫画雑誌を毎週読んで2か月ほど経つと、その雑誌に載っている作品の顔ぶれを覚えてきます。 1年も経つと、大体の作品の話の筋が見えてきます。(極端にストーリーの分かりづらい物を除く)
徐々にお気に入り作品も固まり、漫画ならではの「1ページ目でテンションが上がる」という作品も、 全体の1~2割くらい出現してきます。
きっと、絵に対して、条件反射が働くんですね。
わたしは現在「ヤングマガジン」と「モーニング」を毎週購入してますが、 1ページ目でテンションが上がる作品は、だいたい以下のような顔ぶれです。
ヤンマガ
作品 | 主人公 | ジャンル |
---|---|---|
賭博堕天録カイジ | カイジ | ギャンブル |
セブン☆スター | タクボン | 青春グラフィティ |
バカビリーバー | もついち | 格闘×ギャグ |
モーニング
作品 | 主人公 | ジャンル |
---|---|---|
グラゼニ | 夏之助 | プロ野球サバイバル |
バトルスタディーズ | 笑太郎 | リアル高校野球 |
ピアノの森 | カイ | ピアニスト人生譚 |
へうげもの | 古田織部 | 戦国×物欲 |
HaHa | のぶちゃん | マザコン漫画(?) |
上記の作品は、疲れてても読めますし、読み飛ばすという事がありません。(HaHaは終わっちゃいましたが)
絵に慣れ、語り口に慣れ、読む際の勘所が分かっているのだと思います。
ほかの作品も、基本的には飛ばさず読みますが、時々飛ばしてしまう作品も。 少しネガキャンになってしまいますが…たとえば以下の作品。
作品 | 主人公 | ジャンル |
---|---|---|
みなみけ | 南家三姉妹 | 日常もの |
クッキングパパ | 荒岩一味 | 料理×人生賛歌 |
OL進化論 | ジュンちゃん | 4コマ×生活の一コマ |
とりぱん | 作者(?) | 生き物観察 |
いわゆる「一話完結もの」です。読まなくてもストーリーに支障がないので飛ばしてしまうという。 「クッキングパパ」など、たまに凄く感動する話があったりするので、イカンなぁと思うのですが。
しかし一方で「Back Street Girls」とかは欠かさず読んでたりする。
どんな要素が「読み飛ばされない漫画」に必要でしょうか。
- 勝負や出来事の推移、登場人物の一挙手一投足が気になる
- 読み逃した回に重大な出来事が起こる可能性が高い(展開が速い、または劇的)
- 絵で魅せてくる
読む前の「期待感」につながる要素群ですね。
「読めば面白い」でも良いのですが、読む前からページをめくらせる力が強いことは、 やはりアドバンテージではないかと思います。
不利な立場にある、新連載と読み切り漫画
皆さんは新連載や読み切りって欠かさず読みますか?わたしは半々といったところです。
買った雑誌は基本的に全ての漫画を読んでいくので、半分スルーするというのは割に無視できない現象です。
新連載や読み切りには、描き手側にとって、色々と不利な側面があります。
- これまでのストーリーがない分、興味の持たせ方が難しい
- 作品のターゲットがまだ絞り込めていない
- 馴染みのない絵が出てくるので、読者が面食らう
- 描き手が若いことが多い
- 既存の作品を第一として買う読者は、新しいものへの期待感がうすい
最後の項目は一部読者(わたし)の個人的事情ですが、ほかは一般に通用する事情のはず。
『バクマン』には「一位で当たり前の一話」という言葉が登場しますが、ちょっぴり「本当かよ」と思ってしまったり。
一つずつ見ていきましょう。
これまでのストーリーがない
まったく新しい世界観が、見知った作品群にポンと出現するというのは、 ある意味「異物」が現れることを意味します。
知らない世界で、知らないキャラクターが、聞いたことの無いストーリーを突然展開しはじめる。 そこに興味を持たせるのは至難の業であるかと思います。
三田紀房さんのプレゼン本『プレゼンの技術はマンガに学べ!』の中で、 「漫画家にとって新連載の第一話はもっとも気を遣うところ」ということが語られていました。
「じぶんの作品」を「圧倒的に面白いもの」として受け入れてもらう訳ですから、 新学期の自己紹介などに照らしてみれば、そのハードルの高さを少しは推し量ることができます。
まぁ、それでもたまには読み飛ばしてしまうんですけれど…。(スミマセン)
作品のターゲットがまだ絞り込めていない
聞いた話ですが、読者アンケートの反応を見て作風を決めていくということがあるそうです。
つい先日『銀座からまる百貨店 お客様相談室』がモーニングで始まった時、 「どんな内容を期待しますか?」という、選択式のアンケート項目があったのを覚えています。
(わたしは確か「銀座と言う街のブランド感」に一票入れておきました)
最終的に好きになる漫画でも「第一話が衝撃的に面白かった」というケースよりは、 むしろ「第一話は微妙」で、以降徐々に面白くなっていくという漫画の方が多いです。
近頃の連載だと、『4D』とか『ディノ・サピエンス』『放課後ミンコフスキー』など。
実は、今夢中で読んでいる週刊少年ジャンプの『トリコ』もそうでした。
第一話って、凡庸だったり、魅力がまだ隠れていたり、詰め込みすぎることがありますよね。
(読み手のリテラシーが低いせいかもしれませんが…。)
馴染みのない絵に面食らう
知っている絵の中に、突然知らない絵が出てくるので、ビックリして飛ばすという行動に移る。
ちょっとあんまりな気もしますが、「ほかに読みたい漫画があるし…」という事情と、時間の制約がそれを後押しします。
好みにマッチする絵柄や、猛烈に興味を引くテーマ、瞬時にわかる魅力があればそれを留めることができますが、 一つの話の面白さがピークに達するのは話の後半であることが多いですから、
最初の2~3ページに強い魅力を感じることはなかなかありません。
この点、すごく上手に引っ張ってくれる作品もあって、最近だとヤンマガに載った『スクランブル』がそうでした。
第二次大戦の戦闘機パイロットが、一夜の命を賭したフライトをする話なのですが、
一機に操縦員(部下)と偵察員(上官)が同乗し、後部席の上官がこっそりキャラメルを食べるシーンがあって、 「それ、甘いですか?」と部下に看破される。
その直後の二人のやり取りで心を掴まれた。
命がけの任務の空気感が伝わってくるエピソードが、最初の3ページくらいでしっかり盛り込まれていたのです。
「読もうか、読むまいか」という迷いをなし崩しに出来る読み切りは、良い読み切りだと思います。
描き手が(比較的)若い
まだ学生だったり、二十歳にならないような方の読み切りがよく載ります。
「勢い」や「絵のオリジナリティ」や「価値観の違い」で、甘酸っぱくなるような良い漫画も多々あるのですが、 やっぱりこなれた作品に比べると格段に読みづらい。
成熟前の描き手の作品を読んでも、ポテンシャルを的確に計れる人は、すごいなと思います。
未来は読者(ぼくら)の手の中
読者アンケート、最近はモバイルやPCから送れるようになっています。
わたしも月に1回ぐらいは送っています。主に、お気に入りの作品で最高に面白い回があった時ですが。
このアンケートとか、Webでの盛り上がりによって、新人漫画家さんが漫画家としてやっていけるか左右されるらしい。
ちょっとそのあたりを想像して、自分の行動を変えていければ良いなと思います。
面白いものを、花開く前にキャッチして発信する。
折角の自己主張メディア、使いこなしていきたいですね。