その昔「外伝」を第3章で投げた子供が大人になり「ファイアーエムブレムEchoes もうひとりの英雄王」で泣かされた話

▲ 「ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王 オリジナル・サウンドトラック」のジャケット。クリアーの翌日にこれを注文しました。
▲ 「ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王 オリジナル・サウンドトラック」のジャケット

最新作として「風花雪月」が出て久しいいま(2020/02/16)、なぜか「ファイアーエムブレムEchoes」を昨日クリアーしました。FE2作目の「外伝」のリメイク作です。2017年の発売日に購入したのですが、クリアーまで3年近くかかってしまいました。まぁこれくらいは「FEあるある」の範疇でしょう。

実のところ、本作には格別の思い入れを持ってプレイしました。 実は私、1992年生まれ。ファイアーエムブレム外伝」が発売したまさにその年生まれです。 「ファイアーエムブレムEchoes」は「外伝」のリメイク作に当たります。ニンテンドーダイレクトで「アルムとセリカが暖炉の前で語らうPV」が発表された時、大興奮させられたものです。

余談ですが、たいていの場合、「自分が生まれた年のゲーム」って、自分自身の世代より少し上の人が遊ぶので、案外遊んだ経験がなかったりもします。ですがたきめしの家族には5個上の兄(@kisoru)がおりまして、兄がちょうど私と同い年くらいのゲームについてはドンピシャ世代だったお陰で、1992年~1996年くらいに出たゲームは取りこぼさずに済んだりもしました。ちなみに1992年生まれのゲームにはほかに「星のカービィ」がありますし、1996年というと「スーパーマリオRPG」「星のカービィSDX」「ポケモン赤緑」「スーパーマリオ64」など・・ゲームの当たり年と言われていますね。 そんな訳でわたしにとって「生まれてはじめてのファイアーエムブレム」は、「3歳くらいの時に兄の背中越しに見た『こんな暗いゲーム画面があるのか』という驚き」とともにありました(当時の戦闘背景グラは真っ暗だったんですね)。

そうしたのち、わたし自身も「ファイアーエムブレム外伝」を触るようになったというのが当時のいきさつです。

当時のプレイについて

当時はレベル上げにかまけすぎて、1章で2ループ魔戦士を育てた挙句、結局3章でやめてしまいました(!)。ただ、Echoesを通しで遊んでみてもかなり難しかったし(最近は全員生存にこだわりすぎず遊んでいますが・・3人ロストしてしまいました)、成長率にも偏りがあるので、たぶんそのまま続けてもクリアーできなかったんじゃないかなと思います。

ファイアーエムブレムEchoes」ではじめて4章以降のストーリーを目にし、大の大人が泣いた

大の大人が泣きました。 (まぁ私はことゲームに関しては涙腺弱いので参考になりませんが・・) 上記のように「外伝で一度3章で投げた」という経験がありましたが、そもそもこのゲーム「3章まででも語れる要素ありすぎ」なのです。「解放戦争: それぞれの道」というBGMがありましてですね・・まぁこの話はいいとして。

全体を通じて、ちょっとあまりに魅力的すぎたタイトルだったので、未プレイの方にもおすそ分けしたいと思いこの記事を書き始めた次第です。20年越しの伏線回収をみた個人的感動も踏まえて、ご紹介させていただきたいと思います。

そもそも「ファイアーエムブレム外伝」が魅力満載のタイトルである

ファイアーエムブレム外伝は「FEシリーズ第2作」にあたる作品です。1990年に「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」(スマブラでもおなじみの”マルスのFE”ですね)がリリースされ、その2年後に登場したマルスが救ったアカネイア大陸のとなり、辺境の島国(当時設定)バレンシアで起きた戦乱の物語」がモチーフのタイトルです。

「暗黒竜」でファイアーエムブレムというタイトルの原型がつくられました。「ユニット」「クラス」といった概念から、「章立てして進むストーリー」「お城や森、平野、橋といったマップの特色」などのストーリーを彩るゲーム要素までです。そして、「外伝」は第2作にしてそこに破壊的イノベーションを起こした作品です。

プレイヤーがみずからマップを移動することで国土の広さを表現

「暗黒竜」はマップを観察することでその土地の特色がわかるという仕組みになっていました。分かりやすくは第1章のタリス王国の「辺境の島国感」はすごいですね。印象に残っている方も多いと思います。

一方で、「外伝」は「戦闘マップ」と「全体マップ」を行き来するシステムをファイアーエムブレムとして初めて取り入れました。最近の作品だと「ファイアーエムブレム覚醒」のそれに近いシステムです。これによって、「南北に広いバレンシア大陸」「南の辺境の村ラムから旅立つアルム」「それぞれの道を歩むアルムとセリカ(後述します)」といった要素がわかりやすく語られ、「暗黒竜」とは異質の作品に仕立て上げられています。

むらびと」というクラスチェンジ先を選べるクラスが登場

ファイアーエムブレムというタイトルを貫く背骨として「中世的な身分のちがいのある歴史背景」があります。今時どうなんだという物議もあるかもしれませんが、「身分の差が残る世界において、主人公のもとでは貴族と平民が肩を並べて戦う」というところに心を動かされる方も少なくないはずです。これは最新作「風花雪月」に至るまで徹底されているファイアーエムブレムの様式美の一つです。

「暗黒竜」では主に、仲間になる際のテキストによってそうした身分のちがいを表現していました。貴族出身のジョルジュやアストリアといったキャラクターがいる一方で、オグマのような辺境国出身の自警団長や、果てはダロスのような元海賊までといった要領です。ただ、それらユニットは結局のところ「アーチャー」や「傭兵」といったクラスに押し込められており、(性能差はあれ)インタフェースの違いはありませんでした。

「外伝」では「むらびと」というクラスが登場することでよりこの対比を際立たせた感があります。そもそも「村人」ですから平民感がありありで、クラス性能としても貧弱です。ですが、彼らの強みはソシアルナイト・ソルジャー・アーチャー・魔道士の4つの職種からなりたいクラスを選べること。これはシリーズ初の選択的クラスチェンジが可能なクラスであり、のちのち新・暗黒竜での兵種変更や、デフォルト兵種変更システムともいえる風花雪月の資格試験の礎になった感があります。 特に主人公が旅立つラムの村から彼についてくるグレイ・ロビン・クリフの三人組は印象的でしょう。はじめはアルムや、貴族であり正規兵であるルカと比べて弱い3人ですが、育て方によってはエース級のユニットに育てることができ、プレイヤーの感慨もひとしおといったところです。 (このドラマ性については『ファイアーエムブレム Echoes』でより深く掘り下げられました。村人グレイの台詞について後に触れようと思います。)

▲ 「ファイアーエムブレムEchoes」での「村人」。「無限の可能性」というキャッチコピーがアツい。

アルムとセリカ、二人の主人公

さてここまでで紹介した「外伝」の特色はどちらかというと枝葉です。最大の特色は「アルム・セリカという二人の主人公を切り替えて遊ぶというスタイルではないでしょうか。

ここまででリリースされたファイアーエムブレム17作の中でも、ダブル主人公、しかも同一時系列で切り換えて遊ぶスタイルのタイトルは稀です(ほかには『聖魔の光石』)。ダブル主人公が採用されたことで、「外伝」は大きなゲームとしての特色、ストーリーの深みを獲得しました。

「尖りすぎてる」セリカ軍の編成

ゲームの時系列とは反しますが、先にセリカ軍の話から。

前述したように、このゲームの主軸はアルム軍だと言っていいと思います。戦士アルムを中心とし、「ソフィア解放軍」のメンバーを中心とした、騎馬中心のバランスの良いメンバーが揃います。(のちのち不思議な魔道士兄妹なども加わりますが) その一方でというか、アルム軍がいるお陰でというか・・セリカ軍の編成は尖っています。まず初期メンバーが魔道士系4人(厳密には神官・魔道士×2・シスター)。既存作でいう「防御力下から数えたほうが早いユニット」をかき集めたような編成で旅に出ます。

そこにセーバーという傭兵が加わって船旅に出るのですが(序盤の船のマップも本作の大きな印象に残るポイントです)、おもにゾンビから編成される敵部隊を、セーバーを盾に魔法攻撃でゴリゴリ削る戦いが展開されます。かなりアンバランスですが癖になるプレイ感。ダブル主人公でなければおそらくこうした面白すぎる編成は組みづらかったはずです。

ソフィア王城での「出逢い」が泣ける

そうしたアルム軍、セリカ軍の進撃が本作の序盤にあり、第1章では内乱を治めるための解放軍に加わったアルムが、ソフィア王国の王城を取り戻すまでが描かれます。第1章なのにもうこれクライマックスじゃんという展開なのですが。

そうした後、「やせてしまった国土の謎を知るために、ミラに会いにいく」という目的のもと、ソフィアの北端にある「ミラ神殿」をめざすセリカが、途中立ち寄ったソフィア王城でアルムと再会する、というのが第2章の筋道になっています。ここまでが本作の最初のハイライトでしょう。

「VALENTIA COMPLETE」に入っていた付録サントラのこぼれ話

ファイアーエムブレム外伝は章立てのストーリーとなっており、第1章がアルム、第2章がセリカの旅立ちの物語となります。 外伝の楽曲にはそれぞれタイトルがついているのですが、「戦い1」や「戦闘MAP1_1」など素っ気ないものが多めです(こうした曲はスマブラでもおなじみですね)。そうした中、ソフィア城のテラスでアルムとセリカが再会するときの曲は「出逢い」となっています。

ファイアーエムブレムEchoesが発売される折、「マイニンテンドーストア限定版」が発売されました。その「VALENTIA COMPLETE」にはファミコン原曲とEchoesのアレンジが交互に流れる」というCDが封入されたのですが、そちらに収録されたEchoes arr Ver.には「解放への勇進」「恐れを知らぬ白刃の」などといったカッコイイ曲名がつけられています。

そうした中、この出逢いのテーマに付けられた曲は「出逢い <Echoes ver.>」。もう製作者の確信犯としか思えない、「この曲だけは当初から特別でしょ」という想いに満ちた曲名となっていました。

ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王 VALENTIA COMPLETE」同梱CDの楽曲リスト。「出逢い <Echoes ver.>」が聴きどころ。「ミラの加護とともに」などの楽曲ももちろん、本作のためにアレンジされている。

「外伝」が当時において卓越したストーリーをもった作品だったことが、このネーミングから若干でも透けて見えるのではないかな、と思います。

第3章以降のドラマ、第4章からの畳みかけがスゴかった

さて、実は本作の大筋の魅力はここまでで語り尽きていると言っていいような気がします。というのも、2回目にアルムとセリカが出逢うとき、本作は最後の戦いを迎えているからです。

最近のファイアーエムブレムでは、複数国の戦いを描いた作品が多めです。「風花雪月」ではアドラステア帝国・ファーガス神聖王国・レスター諸侯同盟領の戦いを描き、それぞれの国の若き君主を育てた教師ベレト(ベレス)を中心に見事なストーリーを描きました。個人的には「覚醒・ifはすごいタイトルだったけど、戦いにまつわるストーリーはちょっと平板だったかも」と感じただけに嬉しいポイントでした。 しかし、真に価値があるのは複数国が絡み合う複雑なストーリーというよりも、それらについて描き出すだけの構築力や設計力、シナリオや台詞の作り込みのほうにあるんだなぁということが「Echoes」を遊び比べたことでよく分かりました。

第3章以降で明らかになる事実、そこからふたたびの「出逢い」に至るまで二人が辿る道筋が、「ファイアーエムブレムEchoes」の体験を面白くしています。ここから先のストーリーについては、是非ゲームを遊んで体験いただければと思います。

わたしが「Echoes」でとくに刺さった台詞 - 村人グレイの言葉

ファイアーエムブレム外伝には「むらびと」というクラスがあり、本作の大きな特色になっていることを述べました。「主人公のもと、貴族と平民がともに戦う」ということがシリーズの大きな特色になっていることは、先に述べた通りです。

本作が佳境に入る第4章で、村人グレイ(この頃にはいっぱしの戦力になっているはずです)が放つ言葉があります。それを紹介して、本作の紹介の締めくくりとしたいと思います。

とうとうリゲル帝国まで きちまったなあ… あのちっぽけな村で一生終わると 思ってたのに、もう訳わかんねえや。 だって、父ちゃんもその父ちゃんも その前もずっとずっと… 俺たち平民の人生なんて そんなもんだったんだぜ?
なあ、アルム。これからは、そうじゃなくなっていくと 思っていいのか? 貴族だろうが平民だろうが、 なろうと思えば騎士にだってなれる。 そんな世界になれば、俺が殺した人たちも 少しは浮かばれるのかねえ… なーんつってな。 へへっ…

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